『七日間の初恋』【4】

 

『七日目』

 

 

 夢を見た。

 

 どこまでも続く草原の緑、どこまでも続く天の青。

 吹き抜ける風は、自分の身体を優しく包み、遠ざかっていった。

 彼のように。

 その夢の中で、ブラは巨大な一本の樹木に寄りかかり、世界を眺めていた。

 彼の作り出した世界ではない。

 自分が覚えている感覚から、再現された景色だ。

 あの世界は、16号が現実にいた時に感じた世界を、再現したという。

 彼にとって世界とは、こんなにも美しいものだったのだろう。

 それは貴方の心が美しかったからよ。

 心の中で、ブラは16号に告げた。

 彼に会いたかった。

 どんな美しい世界よりも、ただ彼に会いたかった。

 今日一日、どれほどあの箱に触れようとしたか判らない。

 だが会いたい気持ちが募ると同時に、彼の最後の言葉が蘇る。

 

『さようなら』

 

 彼はどんな気持ちでそう告げたのだろう。

 その決意の言葉が、自分の身勝手さを吹き飛ばした。

 彼の決意を、無駄にしてはならない。

 溜まる涙を両手で押さえ、嗚咽をかみ殺しながらブラは声を出した。

 

『ありがとう』 「ありがとう」

 

『さようなら』 「さようなら」

 

『お前に会えて、本当に良かった』 「私も、私も・・・」

 

 私の世界が消える。

 彼との世界が、完全に消える。

 

 

 ありがとう。さようなら。私の初恋の人。

 

 

 それ以来、この夢を見ることはない。

 

(了)






あとがき
 きっかけはとあるサイト様の6ブラ漫画でした。
 そのサイト様の6ブラ漫画は、見る度に心がほんわかと温まる作品で、
 ああ、私もこんな6ブラ作品を作りたいものだなと思っていましたが、
 やはり私の中の16号は故人なのです。

 ですからこの作品も、そのきっかけとなった世界観とは全く真逆なものとなってしまい、本当に申し訳なく思っています。
 それでも6ブラ好きという気持ちには変わりありません。
 もし16号が生き残っていれば、恐らく双子以上にのめり込んでいったと思います。
 それほど16号が好きで好きで、本当に幸せになってほしかったんです。
 他の16号好きさんは、彼をどう幸せにしてゆくのか、とても見てみたい今日この頃。



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